2014/04/28

女のいない男たち


「女のいない男たち」 二巡目終了

前作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が店頭から売り切れが続出した時に比べるとやや寂しい感じ。
でも出版不況とはいえ発売日のカウントダウンは、僕に「I PHONE」「ドラゴンクエスト」の秋葉原の行列を連想させる。
本を読むという行為はもう少し、密やかであって欲しいと僕は願う。

何処かで読んだのだけれど、短編小説というのはあまり人気がないようで。
その理由は長編、短編どちらも本を読むことに割かれる時間は同じでも、読後のカタルシスのようなものが長編に比べると短編は「薄い」ということにある。
あと、何をいいたいのか分からないから、モヤモヤするという面白い意見も。
分かる気はする。短編ってある所で物語をスパッと切る行為だから。
でも僕はわりと短編小説は長編と同じくらい好きだったりする。

例えばざっと挙げるなら乙一「GOTH」「ZOO」、レイモンド・カーヴァー、スーティブン・キング
あ、キングは短編と言うには短編すら長編の部類に入るかもしれないけれど・・・
村上春樹の短編「東京奇譚集」も良かった。
2005年出版だから、もう9年も前だ。
東京奇譚集の中でも、「ハナレイ・ベイ」という作品が色褪せずに印象に残っている。
ハワイ・カウアイ島 ハナレイ・ベイで鮫に足を食われて亡くなった息子をもつ主人公が命日近くになるとハナレナ・ベイを訪れただ海を見て過ごすという話だ。(映画化が進められていようだ)

「女のいない男たち」は筆者のまえがきにあるように「いろんな事情で女性に去られてしまった男たち、あるいは去られようとしている男たち。」がモチーフである。

ホリエモンの書評も的確だ。
「この短篇集は自分をセルフコントロール出来てると思っている自信家の中年たちが実は自分自身をコントロールできてなかったことを思い知る、切なくも現実的な話だ。」

まあ、僕らの年代においては「難病と愛」がテーマの恋愛小説よりは身近で切実に感じられる。

「ドライブ・マイ・カー」「イェスタディ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」あとがき「女のいない女たち」
それぞれに面白く一気に読んだ。

ビートルズ「イエスタデイ」の替え歌の歌詞(単行本化で削除)も味がある。

「昨日は
あしたのおとといで
おとといのあしたや
それはまあ
しゃあないよなあ」

あと妙に説得力があったのが「独立器官」で主人公が語る女性観。

「すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている。どんな嘘をどこでどのようにつくか、それは人によって少しずつ違う。しかしすべての女性はどこかの時点で必ず嘘をつくし、それも大事なことで嘘をつく。大事でないことでももちろん嘘はつくけれど、それはそれとして、いちばん大事なところで嘘をつくことをためらわない。そしてそのときほとんどの女性は顔色ひとつ、声音ひとつ変えない。なぜならそれは彼女ではなく、彼女の具わった独立器官が勝手におこなっていることだからだ。だからこそ嘘をつくことによって、彼女たちの美しい良心が痛んだり、彼女たちの安らかな眠りが損なわれたりするようなことはー特殊な例外を別にすればーまず起こらない」

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ネット上の「男のいない女たち」の書評をいろいろと読んだ。
あいかわらず多いのが「できればこんな本は読みたくないのだけれど、まあしかたなく」という「枕」というか「エクスキューズ」が多いことだ。
もちろん、世に出されたものだからどんな「批評」があってもいいと思うけれど・・・
読みたくないものは読まないでいればいいなと思うのだが。

新鋭作家の対談で「影響を受けた作家は?」と聞かれ
「村上春樹さん」と答えるとその場が凍りつくと答えていたことからも
「村上春樹」というのはいまだに禁忌語で文学的フォーレター・ワードであるようだ。

僕は大学生の頃に初めて村上春樹の本を買って読んでそれから、ずっと熱心な読者だ。
本棚の本の多くは「初版本」だ。

次の長編が待ち遠しい。

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